惑星のさみだれのレビュー

66位:惑星のさみだれ

作者:水上 悟志
出版社:ヤングキング
発売日:2006/1/27
完結済み


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あらすじ

主人公の雨宮夕日は、ある朝、言葉を喋るトカゲから世界を救う騎士の1人として選ばれたことを告げられる。最初は無関心な夕日だったが、敵である魔法使いが生み出した泥人形の襲撃を受ける。死を覚悟したその時、守るべき姫である朝日奈さみだれに救われ、更に常人ならざるさみだれの気概に触れたことで彼女に忠誠を誓う。ここにひとつの主従が生まれ、この時から夕日の戦いが始まった。


絵柄的に萌え系漫画かと思って手にとるのが遅れた作品ですが、読んでみるとちゃんとした少年バトル漫画。
ただ、バトル自体はあんまり期待しない方がいいですね。設定は面白いんだが、イマイチ敵勢力とのバトルに感情移入ができませんでした。
がしかし、読後感はぴか一。仲間との友情や姫との約束、最終バトル後に地球を姫の手で破壊するというむちゃくちゃな目標がどう展開するのか気になる部分、仲間を裏切るのか、本当に地球を破壊するのかと伏線が随所に落ちてあり、一度はまると一気にラストまで読み込んじゃいました。

いやぁ、面白いじゃないですかぁ!

ほのぼの系の絵で、意外とシリアスなストーリーってのは、前作「散人左道」と

似たところがありますが、より腕を上げられたなぁって感じです。

今回は魔術師に姫君、そして騎士というファンタジー路線をおとりですが、

舞台が現代の日本のようですので、それはあくまで“殻”って感じかな?

絵柄ではなく、心理描写で緊迫感を演出される技はなかなかお見事です。

しかし、少年画報社からの刊行ってことと、今ひとつ有名ではおありじゃない(失礼!)

ってのが相まってか、発行部数が少ないようですねー。

書店店頭で見つけるのは意外と大変かもしれません。(苦笑)

もちろん好き嫌いはあるでしょうけど、騙されたと思って読んでみて頂きたい一冊ではあります。

一見構成力がないようで実はかなりあります。

この作品は、前々からこちらのレビューやネット上の漫画好きの間では評判でしたので、気になって一気に全巻読んでみたのですが、確かに心に残る良作でした!

こちらのレビューの内容も総じて同意見ですし、否定的なレビューにさえ同調できます。が、それを踏まえて、いくつか自分なりに思った点があります。

まず、続刊でいわれているこの漫画が「王道の少年漫画」という意見については、自分の中では、「王道の少年漫画」=「ジャンプのワンピのような週刊少年漫画」という意味で違うと思います。どちらかというと、「週刊少年漫画」に飽きた層が次に手に取る「捻りの効いた月刊少年誌やヤング誌といった内容」にあたるかと思います。

次に、1巻であまりにも弱すぎる主人公が知恵を駆使する展開は他作品と比較して異質であり、驚きを感じますね。主人公の性格についても異質で驚けました。また全巻中の物語後半位からの主人公のそれとの比較や、前半主人公の一人称の頭の中での思考をひたすらメインにしていた姫と2人だけの世界からの展開の差異(姫もほとんど絡まない)なども違和感を感じるのは他のレビュアー方と同様事でした。しかし、これも全巻通してみればしっかりと広げた風呂敷の中で完全に畳まれています。(なぜ主人公の住む町にだけ敵が現れるのか?や、なぜ主人公の性格がああなのか等です。)その意味で、若干ネタバレとなりますが、この作品は所謂「世界系であり、中二病であり、少年漫画やバトル漫画」なんですが、それらに対する【作者なりの自分ならこう描くという】思いが情熱的かつ冷静に描ききられている点こそが、最大の魅力であり、美しくさえあります。最終巻での作者のメッセージがそれを物語っています。その意味で、初期のころの展開は作品の土台作りとして必要なステップだったと思えますし、もし、一巻がなければ、この漫画はただのバトル漫画且つ、主人公もヒロインもただのラノベのテンプレ思考且つご都合主義で生まれた産物に留まっていたと言えることでしょう。そう考えると廻り戻って輪廻の中で終局を見据えた正に責任ある大人の構成力だったと賛辞を送りたいところであります!(笑)

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