3月のライオンのレビュー

73位:3月のライオン

作者:羽海野 チカ
出版社:ジェッツ
発売日:2008/2/22
連載中


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あらすじ

15歳で将棋のプロ棋士になった少年・桐山零(きりやま れい)は、幼い頃に交通事故で家族を失い、父の友人である棋士、幸田に内弟子として引き取られた経歴を持つ。高校へ進学せず、六月町にて1人暮らしを始めた零は、その後ある決意を以て1年遅れで高校に入学するが、周囲に溶け込めず校内で孤立し、将棋の対局においても結果を出せずに低迷する。自らの境遇を停滞していると感じていた零は、ある日先輩棋士に無理やり付き合わされたあげくに酔いつぶされ、倒れてこんでいたところをあかりに介抱されたことがきっかけで、橋向かいの三月町に住む川本家と出会い、夕食を共にするなど交流を持つようになる。


今一番期待している将棋漫画。
将棋の戦いよりも将棋を通しての主人公の成長物語です。

15歳で将棋のプロ棋士になった主人公の苦悩やちょっとしたきっかけからの成長をきれいに描かれています。
ひょんなきっかけで出会った川本家との団らんは心が温まるし、元々、他人に興味が無かった主人公が川本家の問題にかかわるようになって人間的に成長していく姿は応援したくなります。

それと、主人公のみのドラマだけでなく、まわりのわき役たちのストーリーも細かく描かれてあり読み応えがあります。

ただ、将棋の戦略や心理戦を期待して読むとはずれになるかもしれません。

amasonから気に入ったレビューを抜粋

何かを取り戻していく優しい物語

『ハチミツとクローバー』で大ヒットをとばした羽海野チカの新作です。
『ハチワンダイバー』『しおんの王』が現在進行形で注目されている「将棋マンガ」というジャンルへの作者の参入は正直やや意外でした。

主人公は幼いときに家族をなくした17歳のプロ棋士、桐山零。1巻では彼の棋士としての生活と、あかり・ひなた・モモの三姉妹との交流をメインにストーリーは進みます。

『ハチクロ』が青春の喜びと痛みをともに見せる作品であったのに対して、本作はコメディ部分で緩急をつけながらも、どちらかというと哀しい印象の作品です。零は多くのものを失ったキャラクターとして描かれており、彼を受けいれ居場所をつくってくれる三姉妹もまた家族をなくしています。

また本作は「才能」をめぐる物語でもあります。零が家族の事故死の後、養父である棋士に引き取られ、現在の一人ぐらしに至るまでを語るエピソードが本書のラストにおさめられています。このエピソードは「才能」がときに持つ者にも、持たない者にも等しく残酷なものになりうることを示しており、本巻の白眉だと思います。

『ハチクロ』ではあまり見られなかった、写実性の高い書きこまれた絵がときおりあらわれるのも興味深いです。前作とはちがった種類のリアルを見せようという作者の意志が感じられます。少女誌から青年誌に発表の場を移した点も象徴的です。

裏表紙には「様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語」と作品紹介がなされています。次巻以降、零たちが何かを取り戻していく姿を見守りたいと思わせる作品です。

見かたによって評価がかわる作品

5巻まで読んだ上での感想です。
羽海野チカさんの、やわらかい優しい空気や情感は素晴らしい。大好きです。
絵のかわいらしさや表現の愛らしさも抜群。
この作者さんの、こういった特色を楽しむのであれば文句なしの作品だと
思います。

ただ…、青年誌の将棋もの漫画という見方で見ると評価は異なります。
正直、将棋の盤上の進行が、こちらの頭の中に入ってきません。
将棋を知らない人でも、ぐいぐい引き込まれ、勝負の先行きが気になる…
その力は弱いです。
題材をせっかく将棋にしたのなら、将棋の面白さをこちらも
感じられるような作品になってほしいところ。
別に専門的にならなくても「なんか、この勝負はすごいらしい」その空気と
ドキドキハラハラ感が伝わってくる何かさえあれば…。

とはいえ、全体評価としては、おもしろい漫画だと思います。
だからこそ、「もうちょっと、将棋を面白くかいてくれないかな〜」と
贅沢な一読者としては願ってしまうのです。

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