ドラゴンヘッドのレビュー

86位:ドラゴンヘッド

作者:望月峯太郎
出版社:ヤングマガジン
発売日:1995/3/1
完結済み


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Amazonmaou

あらすじ

修学旅行の帰途、突如発生した大地震により、主人公青木輝らの乗車していた新幹線は浜松付近のトンネルで凄惨な脱線事故を起こしてしまう。出入り口は崩壊し、外界と完全に遮断されたトンネル内で、3人の生存者、輝、瀬戸憧子、高橋ノブオは救助の可能性に一縷の望みをかけて絶望的な状況を生きのびる術を模索する。死と表裏一体の極限状態に追い込まれた少年達の苦悩とそれに伴う狂気と暴力。世紀末の様相と呈する世界を舞台に人間の本質と「究極の恐怖」を圧倒的な世界観と緻密な描写で描く。


ドラゴンヘッドは人の好みが分かれる漫画です。
まずは、絵柄的に上手いとはいえないですし、結末が謎のままな感じがあり読後感はないんですよね。
でも、極限状態に陥った人間心理を怖いぐらい描かれてあり、自分が遭遇したらどんだけパニックになるんだろうと恐怖を覚えた漫画です。

ストーリーの展開としては、新幹線で通過中に大地震によるトンネル崩壊でトンネル内に閉じ込められた高校生3人によるトンネルからの脱出が最初の山場です。
生き残った3人にとって、何が起こったのか把握できない状態からのスタートで最初からパニックスタート。周りが死体だらけの中ですから当然と言えば当然ですが、描写がうまく怖さを描いています。

トンネルからの脱出後は、正直言えばあんまり覚えてません。
ちょっと昔の漫画すぎて、読んだ時はすげー漫画と感じたことしか記憶になかったりもしますw
そのうち全巻そろえよーかなーで、10数年たったんだよね。

amasonから気に入ったレビューを抜粋

パニックマンガというより、むしろ恐怖哲学マンガ

今更ですが…
十数年ぶりに読んでみて、初回に読了した時の印象とあまりに違っていたので驚きました。
以前読んだときには、大風呂敷を広げてこのモヤモヤな終わり方はなんだと思い
もう二度と読むことはないだろうと押入れの奥に放り込んだものでした。

それが今回の3.11大震災があって、ふっと思い出したのがこのマンガでした。
それでも大災害パニック物のマンガなんて、しばらく手にする気がおきず
震災の不安から少し解放されたつい最近機会があって読んでみました。

きっと以前はストーリーの上っ面だけを追って読んでいたんでしょう。
テルとアコはどうなっちゃうんだろう、この異変の謎はどう解き明かされて、どう決着するんだろう…
でもそういった事がテーマの本じゃなかったんだというのが、今更になってわかりました。
今ではこのラストにも納得がいくし、微かな希望の灯を感じる事も出来ます。
ただラストにテルが到達する心の境地までの展開が速いっ!

圧倒的な恐怖と絶望、それを克服しようとする心の葛藤
人が強く想う事の力も理解できるような気がします。

十数年前がっかりした人たち、ぜひもう一回読んでみて下さい。
もしかしら私のように、え?この漫画ってこんな事語ってたのか、
深い話だったんだー、と発見するかもしれませんよ。

映画よりは面白い

けっこういろいろと賛否が両論な本作ですがこれだけは間違いなく言えます。
映画盤よりは面白い(映画は原作を越えない、ということがやはりここでも立証されました)。
ストーリーはいろいろなところに書かれているとおり、天変地異が起こって今までの暮らしや豊かさが失われたとき、究極的に人間はどうなるのかというものです。
大事な点は、ここでは天変地異と書きましたが、何が起こったのかが最後の最後まで明らかにされないことです。
ヒントとなる断片は適時提示されていきますが、問題の本質は何なのかはつまるところ登場人物の誰一人として知らないのです。
主人公である少年と少女を中心に二人が東京にある自宅を目指す過程で何が起こったのかが明らかにされていくという流れになっています。
ここがこの作品のミソでしょう。
言ってみれば、ミステリーと同じ手法で描かれていると言っても良いかもしれません。
また、細部にこだわってリアルに描くことを筆者は心がけているような印象を受けます。
具体的には、こういう状況で病に倒れたらどれだけ命の危険にさらされるか、薬を手に入れることがいかに困難になるか、銃の登場により人間心理はどう動くか、食糧の確保、性的衝動はどう処理されるのか、などです。
この作品がリアルであるという評価はおおむねこの点にあると思います。
物語自体がリアルかどうかを問うことはさほどこの場合意味のないことでしょう。
それよりも、今現在の我々の生活というものがどれほど微妙な均衡の上に成り立っているのかということを考えながら、あるいは感じながら読み進めていくと面白いと思います。

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